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介護は人なり 5

2016年02月10日(水)14:50

介護業界の労働状況を、事業の立場と職員の立場から考える

〜介護労働の実態調査から見えてくるもの〜



離職の理由のトップは人間関係



 直前の職場を辞めた理由を正規・非正規職員それぞれに調査した結果をみてみよう。



 まず共通している理由としては「職場の人間関係に問題があった」がそれぞれ20%を大きく超える割合として回答されている。非正規に限ってみてみると「結婚・出産・妊娠・育児のため」が15.9%、「家族の介護・介護のため」が7.0%と正規雇用を大きく引き離している。



 働くモチベーションを聞いた回答でも、非正規職員は「自分や家族の都合の良い時間(日)に働けるから」の割合が正規職員に比べて高かったため、働き方を自分でデザインしている人が多いと推測される。



 正規職員の離職理由は「法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため」が25.8%、「自分の将来の見込みが立たなかったから」が17.6%と非常に高い数値を示している。



 この結果からは「働きがいのある仕事だと思ったから」、「人や社会の役に立ちたいから」といったモチベーションで仕事をしていながらも、運営のあり方への不満や将来への不安からに辞めてしまう方が多いと推測される。経営側としては事業所内で解決できる問題の可能性が高いので、改善案を考えられる領域と思われる。





図表 直前の介護の仕事をやめた理由





離職理由の「経営理念への不満」の解釈には注意が必要



 職員側の調査結果をまとめてみると、現在の職場を選んだ理由として挙がっているのは「働きがいのある仕事だと思ったから」、「資格・技能が活かせるから」、「やりたい職種・仕事内容だから」が正規・非正規共に35%〜40%程度あった。



 逆に離職理由として高い割合を示していた「法人の方針や理念に不満があったため」だが、転職理由としての「法人の法人や理念に共感した」と回答した割合は正規職員が9.6%、非正規職員が6.4%と非常に低い数値になっている。



 辞める理由としては経営理念が挙がってくるが、就職理由の時には下がってしまうのは、人間関係の不満などによる感情的な部分で言葉にならないものが、法人理念に置き換わってしまっている可能性もある。職場のスタッフが経営理念を理由に退職を希望してきて、引き止める場合には少し踏み込んだ話し合いが必要になるだろうと思われる。



介護スタッフが答えた不安・不満の解消に役立つ取り組みとは



 職員に直接、働く上での悩み・不安の解消方法について聞いた調査では、なんとトップに「定期的な健康診断の実施」がきている。健康診断は労働安全衛生法によって「事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行なわなければならない。」と定義されている。



 健康診断の実施は事業の規模などで決まるわけではなく、小さな事業所でもスタッフを雇用していれば健康診断を行う義務が発生する。パートスタッフの場合でも1週間の所定労働時間が、社員で勤務するスタッフの4分の3以上であれば、健康診断を行う義務が事業者に発生してくる。該当するにもかかわらず健康診断を受けていないと不満を漏らしているスタッフは事業所内にいないだろうか。



 また事業者が気づいていても受けさせていない場合などはトラブルの元になる。次に目立つのは「介護能力の向上に向けた研修」、「働き方や仕事内容、キャリアについて上司と相談する機会の設定」、「キャリア・アップの仕組み」などの自身のスキルアップにつながる項目だ。次いで、「事故やトラブルへの対応、マニュアル作成などの体制づくり」、「介護に関する事例検討会の開催」などの事業所全体としての情報共有が目立っている。





図表 労働者が回答する「働く上での悩み、不安、不満の解消に役立つ取り組み」



現場の介護職員が受けている研修は少ない。



 職員が回答した不安・不満の解消に役立つ取り組みには「介護能力の向上に向けた研修」、「キャリア・アップの仕組み」などが挙がっているにもかかわらず、実際に研修をうけている介護職員は多くなさそうだ。



 職種別にみてみると、介護支援専門員の資格までもっていれば研修の受講率は9割を超える。しかし訪問介護員、介護職員では受講率は6割程度で、さらに受講した方の受講回数を調べた結果では半数以上が1回〜2回程度になっている。



 現場で活きるようなスキルを身につけたくても、なかなか事業所のサポートが受けられないといった感じではないだろうか。仕事をしていく上での満足感や納得感を職員の方が得られる仕組み作れるところは、離職率防止につながると推測される。



 また取りたい資格として上位に上がっているのは介護支援専門員、介護福祉士だ。少し離れているが社会福祉士の割合も高くなっている。こういった資格取得のためのロードマップを事業所が用意してあげるのも早期の離職防止につながっていく取り組みになると思われる。

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